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家庭外に置かれた子どもたちを養育する施設スタッフおよび里親のための「フェアスタートトレーニング」

トピック B:養育者チームおよびつながりを教える仕事2/2

子どもグループを担当するスタッフチーム

大規模施設向けの有用な作業モデル は、スタッフをグループ分けして、チームを作ることです。このチーム単位で実務をこなし、特定の子どもグループの社会的つながり、物理的な世話、愛着行動を担当します。つまり、長期的に特定の子どもたちを養育する「子育てチーム」となります。

このチームには、毎日、毎週、および毎月の活動計画を立て、子どもたちを観察し、ミーティング向けの報告書を作成し、そのグループの子どもたちそれぞれの今後(の行先)について提案する役割があります。また、子どもたちそれぞれの集団としての自己認識力を高め、養育者との絆を育むことも、このチームが担います。


1. チームと子どもグループのサイズ

子どもグループは少人数(最大8名)にすると、親密かつ個人的なつながりを育みやすくなります。人数が少なすぎると、誰かがグループから外れた場合に傷つきやすくなります。大人数(9人以上)にすると、子どもたちは多様になりますが、一人ひとりを気に掛ける時間が少なくなります。

乳幼児のグループの場合、親密な触れ合いを考慮して、乳幼児の人数は少なく、養育者の人数は多くする必要があります。必要な養育者の数は、養育者の仕事量と地域条件(労働基準)によって異なります。

そのため、施設においては、子どもたちは基本的に4~7人のグループで生活するべきであり、日中は、グループをさらに分けて、それぞれに行動したり、他のグループと合同で行動します(例えば、夕食やスポーツは全グループが集合するなど)。

例えば、5~8人の子どもたちで構成される3グループが一緒に食事やスポーツをすることもあれば、日中にグループ単位で行動することもあります。深刻な問題を抱えている子どもの場合、その子を大人数グループの仲間に入れることが困難であれば、家族規模グループの仲間に入れても構いません。ただし、どの子も、その家族グループを安全基地の拠点と感じられるにようにすることが大切です。


2. 専任養育者システム

グループで生活している子どもたちには、大人とのつながりが極めて重要であり、そのグループの子どもたちとのつながりを深める役割を担う1人(または2人)の養育者が必要になります。現場状況にもよりますが、2~4人の子どもたちにとって「親」の役割を果たすのは養育者1人であることが多く、

子どもの視点からみれば、専任養育者(主養育者)は、子どもについての重要な決断すべてを下し、子どもが自分の生い立ちについての日記を付けられるよう手助けし、他の子どもたちとケンカを見守り、仲裁し、仲直りを促してくれる存在でなければなりません。専任養育者の休職または離職に対しては、現職の専任養育者との別れの準備期間を設け、その中で新たな専任養育者を子どもたちに紹介するといった配慮が必要です。

また、専任養育者の離席や欠勤については、他のスタッフが、専任養育者を引き合いに出しながら、子どもの要求や質問に答えます。例えば、以下のような趣旨の話を10代の子どもたちにします。「(専任養育者の)アンナさんは今、ここに居ないけれど、もし居たら、きっとこうしなさいって言うと思うわ。」


3. 自我形成を支える

その子だけの空間。どの子にも、子ども部屋の一角やベット、食堂のお気に入りの椅子、またはその子とその子の専任養育者だけが開けられる箱といった、その子だけの空間があります。

乳幼児にとっては、くまのぬいぐるみ、おもちゃ、お気に入りのTシャツといったその子にとって特別なものなどがこれに該当し、養育者には、その子だけの空間やお気に入りのものが他の子どもたちに侵されないよう守る役割があります。

乳幼児の成長し続ける自己認識能力を支えるには、 鏡で遊んだり、声を録音して聞かせたり、普段の様子をビデオに収めて見せるとよいでしょう。そうすることで、子どもは自分を認識し、周囲とどのような関係があるかを学ぶことができます。

また、子どものベットやロッカーなどに、その子の写真と目立つ色の名札を貼るのもよいでしょう。

3歳以上の子どもには、その子専用の日記帳を作ります。毎日、その日の出来事や関心事を子どもに問い、その子の答えを、その子が見ているところで日記帳に書き入れます。人数や時間に限りがある場合は、これをグループでの活動にして、問いかけに対して考える時間を子どもたちに3分ほど与えます。

時々、その子の様子を写真に収めて、日記帳に貼るのもよいでしょう。その子の親戚についての情報も、その子と話して、書き入れます。


専任養育者がその子の行動の個性的な部分について、その子と話すことで、その子が周囲の集団とのつながりを理解したり、その子の特技や才能を見出したりすることができます。子どもの物理的な成長を定期的に測る、例えば、3ヵ月ごとにその子を壁際などに立たせ、背丈を示す目印を入れて、どれくらい背が伸びたかを明らかにするといったことが挙げられます。

入学前および入学後の子どもにも、別の意味でのその子だけの空間というものがあります。これは、誰からも干渉されることのない計画的な空間です。行動上の問題を抱えている子どもたちには、常に誰かと何かをし続けるということを苦痛に感じることがあります。聞き分けのない子だからという成り行きでその子を一人にするのではなく、その子の息抜きの時間を定期的に設けます。そうすることで、周囲との衝突をあらかじめ抑えることができます。そのタイミングは、例えば、その子が宿題をする時間など、生活の自然な流れの中で確保されるようにするとよいでしょう。

話し合い

30分間

これまでの説明のような取り組みがすでに行われている場合は、現状に関係のあることについてのみ話し合ってください。

  • 現在のスタッフチームの規模はどれくらいか?子どもたちの社会的つながりという点における、スタッフチームの現在の責任範囲はどんなことか?
  • 子どもたちの面倒をみることに同一の養育者が日中の長い時間を費やせる作業計画はあるか?
  • 可能な限り、そうするには、(現在の)作業計画をどう調節すればよいか?
  • このセッションで説明されたように、一定の子どもグループの責任とタスクを担うチームを作れる段階にあるか?そうでない場合は、どうすればその段階に到達するか?
  • 現在の施設に、専任養育者システムというやり方は存在するか?そうでない場合は、どうすればそれを構成し、改善できるか?
  • どうすれば、自我形成を日常的に支えるために提案できるか。またどのように提案するか(リスト参照)?
  • どのような問題に直面するであろうか、それにどう備えるか?
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