Fairstart Global - JAPAN -
家庭外に置かれた子どもたちを養育する施設スタッフおよび里親のための「フェアスタートトレーニング」

トピック A: 基本的な愛着理論(アタッチメント) - 愛着の仕組み

ジョン・ボウルビィ(JOHN BOWLBY)

ジョン・ボウルビィは、第二次世界大戦孤児となった乳幼児の悲嘆反応を研究した英国の児童精神医学者です。 ボウルビィは、その研究調査をもとに、人間の子どもの発達における「愛着理論」を確立しました。 ボウルビィの最初の疑問は、 「子どもたちはなぜ、生後さらに成長中と長きにわたり親に愛着を持つのか」というものでした。

動物はなぜ愛着行動を示すのか

  • 原始的な生物(爬虫類、魚類、昆虫類)は、「母親」が1回の出産でたくさんの命をこの世に送り出します。 中には、1時間に数千個の卵を産む魚もいます。 しかしながら、この種の生物において、卵を生んだ「お母さん」が「赤ちゃん」を一生懸命に育てることはありません。 これは、卵の中いる間に、「赤ちゃんの脳の発達」が完了するためです。 「赤ちゃん」には、卵から出てすぐに、這ったり、泳いだり、狩りをしたり、食べたりする能力が備わっています。 卵から出る前に脳の発達が完了しているために、「母親による子育て」は不要ということです。
  • それに比べて、哺乳類(猫、犬、クジラ、ゴリラ、人間など、授乳する動物)は、全く異なる生い立ちを経るだけではなく、とても複雑な脳を持って生 まれます。 また、1回の出産で生まれてくる赤ちゃんの数が少なく、その数少ない赤ちゃんを育てることに時間をかけます。 人間の赤ちゃんは、とても未熟な脳を持って生まれてきます。その未熟な状態が何年も続くため、両親は子どもの脳を整えて「プログラミング」します。 その中で、子どもたちは、大人から、読む、考える、協調する、問題を解決するといったことを学んでいきます。 つまり、養育者のしつけと保護を受けながら、脳が作り上げられていきます。
  • 人間の脳が完全に発達するまでには、16~17年を要し、その間、養育者からの養護と支えを終始、必要とします。

質問:

  • ペットを飼っているか。 ペットが子どもや卵を産んだ後、例えば親猫は子猫にどのように愛情を注いでいるか。
例えば、親猫が子猫に愛情を示すときには、どのようなことをするか。 子猫が独り立ちする(もらわれていく)までに、親猫と子猫はどれくらい一緒に暮らすか。

愛着行動とは

  • 生まれたばかりの赤ちゃんの脳は未熟かつ無力であるということは、哺乳類の生死を分ける大きな問題であり、その命は、特に人生の最初の数年間は、大人の養育者からの外的な支えに完全に依存します
  • それゆえに人間には、愛着というシステムがあり、これによって赤ちゃんは安心してよいこと、守られていること、および大切にされていることを感じるようになります。 つまり、愛着行動とは、
    • 大人の養育者からの保護、食物、保育を求める赤ちゃんの本能です。
  • 養育者が赤ちゃんのもとを去ると、赤ちゃんは死んでしまいます。 そのため、赤ちゃんは物理的に離れることを避けようとし、離れるに対して愛着行動で反応します。 愛着システムが活発になるとき:
    • 愛着システムは、養育者が離れる、または単に離れることへの不安があるだけでも、活発になります。
    • 物理的に離れることを避ける行動は、赤ちゃんが生き残るための唯一の術です。
    • 赤ちゃんは、養育者がどこかに行こうとすると、養育者にしがみついたり、泣いたり、探したり、気が沈んだり、悲しくなったり、反抗したりして、離れることを避けようとします。
  • これは当たり前のことで、健全な愛着行動です。 養育者がどこかへ行こうとしても反応しない赤ちゃんは、養育者の愛情探しを諦めてしまった可能性があります。 そのような赤ちゃんは、「とても落ち着いている」と思われてしまいがちですが、この挙動は普通ではありません。 養育者がどこかへ行こうとすることに、過剰に反応する赤ちゃんは、養育者との辛い別れを経験しているか、不安を抱いてしまうような別れを経験した可能性が あります。 この過剰反応は、あまり健全ではありません。生みの親からの愛情を受けられなかった孤児にはとかく、このような反応が見られます。

質問:

  • 自分の子どもが、健全な愛着行動(離れようとすると泣く、しがみつく、叫ぶ、気が沈むなど)を見せたことはあるか。
  • どのようなときに、子どもにそのような行動が見られるか。 そばから離れようとしても、反応しない子どもはいるか。 そばから離れると、しばらくの間、過剰反応し続ける子どもはいるか。

質問:

  • 子どもが健全な愛着行動をみせるときに、どのような実践をしているか。
  • 子どもの健全な愛着行動に対して、どのように反応しているか?(例えば、あやす、叱る、面倒だと思う、泣かれるとストレスに感じるなど)
  • 日本の文化や風習において、子どもが愛着行動を見せるとき、それに対して、親は一般にどう反応するか。
  • しがみつく乳幼児の扱い方について、自分の母親(または父親)から何か教えてもらったことはあるか。

理解度チェック

  • 愛着理論を確立したのは誰か。
  • 哺乳類(特に人間)だけに愛着システムがあるのはなぜか。
  • 健全な愛着行動を、家庭での実例を交えて説明してください。
  • 愛着行動をあまり見せない、または極端に見せる子どもについて説明してください。

次回のセッションまでの間の取り組み提案

ビデオカメラや携帯電話のカメラ機能を使用して、日常的な仕事をする中で見られる健全な愛着行動を撮影する。 そばを離れるときの反応が、子どもによってどう異なるか。
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