Fairstart Global - JAPAN -
家庭外に置かれた子どもたちを養育する施設スタッフおよび里親のための「フェアスタートトレーニング」

里親との暮らしを里子がどう受け止めるのか。
移行期についての理解

里子を迎え入れる準備をしてきた里親家庭に、実際にその子を迎え入れるとき、里親はその子が新しい家族に馴染めるよう、あらゆる能力を発揮することを心待ちにしていることでしょう。
里子にとって、里親との生活を始めるということは、里親が思うよりも遥かに難しいということを理解する必要があります。その子がその意思に反して実 親から引き離された場合には特に、混沌とした状況の中で困惑したままの状態で、里親に託されることがあります。 たとえ子どもがよく言い聞かされていたとしても、里親に託されることは子どもたちにとって、極めて難しい経験であり、里親家庭に安心感を抱き始める前に、 状況を受け入れることに長い時間を必要とします。

パラドックス: 自分の家族を失うのと同時に起こる別の家族との出会い

ここで、典型的な反応として、10歳の少女が里親との生活で最初の1年間に感じたことについて紹介します。 里親に託された当時、この少女は6歳でした。

里親さんは親切にしてくれたけれども、本当に嫌いでした。だって初めて会った人たちだったから。ママやお友だちのことがいなくて寂しいってずっと思っていたわ。里親さんが私に優しくしてくれると、いつもママのことを思い出していたわ。でも、私はとても悪い子だから、ママと暮らせなくなっちゃったのねって思っていたの。部屋は新しくて、家の中は私の知らない臭いがして好きじゃなかった。最初はとても不安で隠れて泣いてばかりいて、逃げ出そうとしたこともあったけど、どのバスに乗ればいいのか分からなくて、戻ってきちゃった。里親さんが、私に何かをくれようとすると、ママはこれを買うことができなくて、それで私はママのところから連れて行かれちゃったんだわって思っていたから、里親さんに「お金をもらって私の世話をしているくせに」、「私のことなんか好きじゃないくせに」って怒鳴りつけたの。そしたら、里親さんはとても悲しい顔をして、私も悪いことをしたなって思ったわ。だって私が里親さんに悲しい思いをさせたんだもの。でも、私はママのところから引き離されたことにとても怒っていたの。それに、もし里親さんを好きになったら、ママが怒るんじゃないかしらって思っていたの。私のお友だちもママも私のことなんてすっかり忘れていると思っていたら、ある日、里親さんが、私が前に住んでいたところに連れて行ってくれて、お友だちにお手紙を書くのを手伝ってくれたときはとても嬉しかった。今では、里親さんが私のことを大好きだっていうのがわかるし、時々、私がここに住み始めたころに、私がどれほどひどい振る舞いをしたか笑いながら話せるようになったわ。

この子どもの話は、里親と暮らし始めた里子が新しい環境に適応しようとする傍らで、どのように警戒し、悲しみ、そして混乱するかということを示しています。この子どもはまさに、逆説的な危機状況にあり、大切な人を失ったばかりで、その喪失の最中にいながらも、その子を育てるために仲良くしようとする人とも折り合いを付けなければなりません。例えばもし、何の説明もなく自分が突然に仕事から解雇され、職場を去ろうとしているときに、前向きな人たちと偶然に出会い、その人たちから全く同じ仕事に誘われたら、どうしますか。その人たちを信用しますか。おそらく、手放しで信用するのは難しいことでしょう。

後続のセッション(セッション7「喪失からの立ち直り」とセッション11「わたしはだあれ?」)では、愛着と、喪失に対する子どもの反応について詳しく説明しています。次のトピックでは、前の養育者から次の養育者への移行の時期に、子どもに見られる最初の反応に、里親としてどう対処するかについて対策を練ります。
|トップへ戻る|