Fairstart Global - JAPAN -
家庭外に置かれた子どもたちを養育する施設スタッフおよび里親のための「フェアスタートトレーニング」

トピック B:地域社会とのつながりを支える実践

地域に溶け込むための活動計画を活用する

子どもたちの地域社会への参加を支える最もシンプルな方法は、日常の活動計画を調整して、計画に施設外での活動を入れることです。

以下の提案を読み、各提案につき2分間程度の話し合いをします。

  • 乳幼児は毎日または毎週、施設外を散歩して、公園、遊び場、商店街などで施設外の世界を経験する。
    • そうすると、子どもたちは施設外の世界に慣れて、地域の人たちも子どもたちに慣れる。
  • この活動の中で、スタッフは、商店街の人たちに話かけて、子どもたちや施設のことを堅苦しくない口調で話す。これは、地域社会の偏見を取り払うことにつながります。スタッフは、子どもたちにも、商店街のお店の種類などを説明し、スーパーなどで子どもたちに必需品を選ばせて、レジで支払いをさせるなどします。10代前後の子どもたちには、おつかいやスタッフの買い物の手伝いをさせることもできます。
  • 子どもたちに、地域の人、場所、活動の特徴を説明したり、絵に描いたり、写真を撮ったりする宿題を与えたり、それを「施設の外の世界」と題した毎週のプロジェクトなどに使うこともできます。例えば、トルコにある、路上生活をしている子どもたちが日中に過ごせる施設では、子どもたち全員にカメラを与え、日常生活の中で最も大切な人や出来事の写真を取るよう求めました。これを機に、子どもたちは写真展を計画し、地域の人々を写真展に招き、子どもたちが写真展示のプレゼンターとして、写真展を訪れた人たちに、自分たちの毎日の生活について説明しました。
  • 子どもたちの年齢に応じて、スタッフとリーダーは施設外で仕事上の付き合いのあるところへ子どもたちを連れて行き、有意義な時間を過ごすこともできます。このような訪問は、堅苦しくならないように手配するほど、効果的です。
  • 他の施設や里親家庭への訪問や集会を計画して、子ども同士でさまざまなアクティビティをさせることもできます。これは、子どもたちにとって、同じ境遇の子どもたちと施設生活について話し合うことで自分たちの状況を理解する良い機会になります。
  • 運動会、祝祭などの社会的行事があるときは、子どもたちがそれに参加することもできます。このような行事でもまた、スタッフ、リーダー、地域の人々の間で日常的な会話をすると、子どもたちが地域社会に溶け込むことを推進できます。
  • 地域によっては、施設の子どもたちは(その学校の)制服を着ていることが当たり前のところもありますが、当たり前ではないところもあります。そのため、子どもたちに制服を着させるか、普段着を着させるかについては、よく話し合ってください。何かを決断する際は、子どもたちが、地域の子どもたちと何ら変わりはないという感じ方に最も有用だと思うことを基準に決断する必要があります。

家庭外に置かれていることの社会的アイデンティティを子どもたちが理解・形成できるよう支える

施設に暮らしていることと、社会におけるアイデンティティについて、子どもたちと定期的に話し合いをすることがでます。

例えば、子どもが施設/里親家庭に暮らしている理由、それが、異なる環境で生活している子どもたち(いわゆる普通の子)とは何ら変わりはないこと、施設/里親家庭とそのグループのことを誇りに思えること、施設外の子どもたちは「孤児」について偏見があること、からかわれたときにどう答えて、いじめにどう反応することができるか、といったことです。

最も大切なことは、子どもたちが自分たちの社会的アイデンティティについて自由に話せる準備ができている場合にのみ、このような話ができるということです。この段階に到達していない子どもたちが、施設に暮らすことが恥ずかしいことだと誤解する可能性のある場合には、このような話はしないでください。


「開かれた施設/里親家庭」の実践

子どもたちのレベルでは、子どもたちのそれぞれ、またはグループに、他の子どもたちを招いて、遊んだり、アクティビティに参加させたりすることができます。複数の子どもたちが施設/里親家庭内の「親睦会」を訪れ、参加できるよう手配することもできます。また、不要になったおもちゃのガレージセールのようなアクティビティを計画することもできます。

例えば、地域の「専門家との懇談会」を設けて、地域から保育士、教師、保健婦などを招いて、この施設での仕事の様子、遭遇する問題やその解決を図ろうとする実践などについてプレゼンテーションを行うこともできます。

その際に、フェアスタートプログラムの取り組み、培った専門的知識などを発表して、懇談会出席者が仕事上、特別な支援が必要な子どもたちと、どうして接しているかについて意見交換をします。報告によると、このプレゼンテーションは大きな反響を呼び、より大がかりな専門フォーラムに発展したという事例があります。

施設外へ出かけて行ったり、施設外の人を招いて施設内の生活を紹介したりするこれらの活動は、地域社会の活動的メンバーであるという実感を子どもたちに与えることにつながります。

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