トピック A: 親許で暮らせない場合の集団的な安全基地の欠如
このトピックを重要とする理由
親許で暮らせない子どもたちは単に、実親との別れを経験しているだけではなく、 その後に出会った養育者や親代わりとの一連の別れを経験していることが多く、 さらに、親権争い、両親の仲違い、施設と里親/実親の不和など、養育者同士の衝突を目の当たりにしてきています。 施設では、養育者が1日に3回入れ替わり、職員一人で子どもたちの面倒をまとめてみることもあれば、そうでないこともあります。
大人の養育者との長期的な安全基地の確保を阻まれた子どもたちの反応は、セッション9()で学んだように回避型、両極型、または無秩序型といった不 適切な愛着行動となって現れ、 そのまま成長すると、絆や社会的な責任感が薄く、攻撃的、または人との付き合いが苦手といった社会的に適性を欠いた行動をするようになることがあります。
親許で暮らせない子どもたちとの専門的な接し方
施設や里親のもとで育った若者を対象とした研究調査では概して、幼年期は自尊心が低く、被拒絶感やホームレスのような漂泊感を抱いたということ、 また施設や里親に託されたときに、それまでその子たちにとって大切だった人のこと、どこかに居場所を求めていること、両親や大切な人との別れという出来事 について誰も触れないということが明らかにされました。
大人になってから安定している孤児には幼年期の共通点が2つあります。
- 子どもたちの生活に関心を持ち、子どもたちにとって親しみやすい特定の養育者
- 社会的自己認識力のある集団生活
例: デンマークの元総理大臣アンカー・ヨルゲンセンは、5歳のときに両親と死に別れながらも、 その実りある人生とキャリアを支えたものは、親代わりになった叔母と、社会的自己認識力があり、一員としての価値を感じながら暮らした孤児院であったと公言しています。
乳幼児にとって、1日または1週間に何度も「別れ」を経験することは、社会性の発達と愛着を阻害するリスクが高く、 3歳以上の子どもたちにとっても、1~2人の養育者との安定した個人的なつながりが必要です。
また、特定の養育者との確かなつながりを持つことが、大勢の養育者と持つことよりも重要です。