Fairstart Global - JAPAN -
家庭外に置かれた子どもたちを養育する施設スタッフおよび里親のための「フェアスタートトレーニング」

トピックA:社会的および情緒的発達と子どもの知的学習との関係 1/2

学習の仕方を覚える学習 1/5

学習のための二大前提:
身の周りの世界をしっかりと理解charできる能力と、学校の先生の話や説明されている物事に集中する能力は、学習のための二大前提です。これは、何を学ぶにせよ身に付けておかなければならない能力です。

赤ちゃんの世話をしながら触れ合い、話しかけ、やりとりする際の養育者のやり方を通して、赤ちゃんはその後の学習に必要な術と能力を身に着けます。そのため、母親または生まれて最初の養育者は、その子の人生において最も重要な先生になります。

健全な養育者は赤ちゃんとどのようにふれあい、なぜそれが、その子にとって貴重な学びの術になるのでしょうか。
健全な養育者は、赤ちゃんが必要な能力を身に付けて、それを鍛えられるようなやり方で、赤ちゃんと接します。養育者の精神的に落ち込み、困惑、憤り、予測し難い行動を目の当たりにした子どもたちは、多くの場合、大きくなってから学習および知的発達上の問題を抱えることになります。


学習の仕方を覚える学習 2/5

集中力:

生まれたばかりの赤ちゃんは、養育者を数秒間だけ、見つめることができます。ただし、養育者は常に、赤ちゃんがもう少しだけ長くそうできるように努めます。声に抑揚をつけたり、赤ちゃんを抱っこしたりして、再び目を合わせようとすると、次第に赤ちゃんが養育者を20秒ほど見つめられるようになります。これを繰り返すことで、赤ちゃんはおもちゃやあそびに興味を持つ時間が長くなり始めます。5歳くらいになると、ものや友だちと5分間ほど(飽きずに)遊べるようになります。小学生になると、10分間の読書や長い時間、友達と遊ぶことができるようになり、落ち着いて先生の話を聞くこともできるようになります。成長するにつれて、1時間ほど集中して本を読むことができるようになります。

0~2歳のときに健全な養育を受けられなかった子どもたちの多くは、長時間しっかりと集中することが不得意になります。

何が重要で何がそうでないのかを集中して理解すること、つまり、周囲に気を取られず、重要な人物に注意を向けること

養育者は、子どもに前向きな感情を掻き立てようとします。これは、赤ちゃんに養育者とのつながりがあると、その養育者がそばにいることに興奮し、赤ちゃんの関心は自然に、その養育者に集まることを意味します。例えば、養育者ほどの興奮を抱かない石けんやタオルには、あまり興味を抱きません。ここから、子どもは、重要なことのみに注意を向けて、そうでないものは忘れるか、または関心を示さないということを覚えます。つまり、授業中に先生の話に集中して、他の子どもたちの無駄話を無視することができます。またこれが、文章や公式の重要な部分を捉え、そうでない部分は聞き流すという能力に進化していきます。

0~2歳のときに健全な養育を受けられなかった子どもたちの多くは、重要人物や事柄に集中することが苦手になり、何が重要で何がそうでないかを洞察することが苦手になります。


学習の仕方を覚える学習 3/5

認識、想起と記憶、好み、および批判的/審美的感覚

養育者と子どものつながりが、子どもの前向きな感情を掻き立てるため、子どもは養育者を特に認識するようになり、その養育者がそばに戻ってきたときの反応もとりわけ大きくなります。これは、養育者の声の調子が同じであったり、同じ服を着ていたりすることによるものだけではなく、養育者と子どもがふれあうときの強い感情が常に同じであることによるものでもあります。そのため、その認識は「ママが近づいてくるぞ。また嬉しくて興奮しちゃうぞ」 – 「この人は見たことないな、知らない人だな、優しくしてくれるけど泣いちゃえ、だってママがいいんだもん」という単純なものです。

そこから、「見たことある人だな、読んだことあるな、算数の公式だな、昨日学校でやったことだな、私の先生だわ」という認識の仕方に変わっていきます。また、学校などで「このお話は好きだけど、このお話はあまり好きじゃない」と、好みのものに言及し、そうでないものを批判する感覚が出てきます。

0~2歳のときに健全な養育を受けられなかった子どもたちの多くは、日常的に物、人、テーマ、方法、パターン、リズムなどを認識したり、思い出したりすることが苦手です。


学習の仕方を覚える学習 4/5

物の関係、距離感覚、言葉の意味の理解

赤ちゃんは常に養育者とふれあい、やりとりしているため、次第に「わたし」、「あなた」、「彼ら、彼女ら」、そしてそれぞれが相互にどう関係しているかを理解し始めます。

これは、文章には「わたし」という主体を表す言葉と「あなた」という目的を表す言葉があり、「わたしたち」の間に起きたことは、その間に動詞を入れて、例えば  「わたしはあなたに微笑みかける。わたしがあなたに微笑みかけると、あなたは嬉しそうにする」という文章になるという文法の理解へと変わっていきます。

小さな子に話かけるときは、言葉の意味に相応する感情も大げさに表現します。例えば、単調に「ママシアワセ」とは言わず、幸せという感情が伝わるように「ママは○○ちゃんといると、す~ごく幸せ」と抑揚をつけて普段とは異なる話し方をします。
このような習慣により、赤ちゃんは感情と言葉を結び付けられるようになり、単に「怒る、幸せ、悲しい」という言葉を聞くだけではなく、それに伴う感情も覚えられます。これが、子どもは、言葉を把握できるだけではなく、その意味、つまりそれによって思い起こされる感情を捉えるといわれる由縁です。
先生が授業中に話しているときや子どもが成長してから本を読むときに、そのときに出てくる言葉によって感情が呼び起こされ、それによって先生の話の意味や意図を理解します。例えば、「おばけ」という言葉を聞いたときに呼び起される感情はどのようなものですか。 それに比べて、「ポカポカで穏やかな昼下がり」という言葉を聞いたときに呼び起される感情はどうですか。
私たちが言葉の意味を理解できるのは、子どもが聞いたり読んだりした言葉の意味を感情で捉えられるように母親が教えてくれたからです。

0~2歳のときに健全な養育を受けられなかった子どもたちの多くは、要素の関係を理解することが苦手になります。例えば、数学の成分を理解することや、数ある言葉をどのように組み立てて、説明することなどです。多くの場合、言葉や文章の意味を理解することを苦手とし、意味をしっかり理解することなく繰り返す傾向が見られます。


学習の仕方を覚える学習 5/5

意欲と我慢

前向きかつ好奇心旺盛で、赤ちゃんのあらゆる行動をプラス思考で捉える習慣が養育者にあると、赤ちゃんは長きにわたる意欲が身に付きます。これを通じて、赤ちゃんは、これから遭遇するものや人をプラス思考で捉え、好奇心旺盛になります。また、養育者は赤ちゃんが不機嫌にならないよう守り、赤ちゃんが苦しそうにしているとあやして癒したりもしますが、少し難しいことや危ないことにも子どもなりに挑戦できるように見守ったりもします。このようにして、赤ちゃんの意欲と我慢の感情が築かれていきます。学校に通う年齢になると、新しいことや難しいことに前向きかつ意欲的に挑戦し、試練に耐え、成長することができるようになります。

0~2歳のときに健全な養育を受けられなかった子どもたちの多くは、長時間しっかりと意欲的な姿勢を保ち続けることが苦手です。本人が必要としていることを打ち明けることが苦手で、何かをしているときに、難しいことに直面すると耐えられなくなり、衝動的な行動を起こすことがあります。

上記に挙げた素養は、どれだけ「勉強ができるか」ということよりも、学生生活で友好関係を築く上で大切な要素です。

例えば、
とある実験において、先生が4歳の子どもたちのグループに飴玉を1つずつ渡して、先生はこれから外出して、15分後に戻ってくるけれども、その間、その飴玉を食べずに待つことができれば、ご褒美にもう1つずつ飴玉がもらえるが、もし先生が戻ってくる前に食べてしまえば、そのご褒美の飴玉はもらえないという説明をして、先生は部屋から出ました。子どもたちの何人かは、先生が帰ってくるまで我慢できましたが、誘惑に負けてしまう子もいました。同じ子どもたちが17歳になってから別の実験をしたところ、4歳のときに我慢できた子たちは教養が身に付き、我慢できなかった子たちはそうでないことが分かりました。4歳のときに我慢できなかった子たちは、知能が高い子であっても、教養が身についていませんでした。この実験から、実親/乳幼児期の養育者から学んだ基本的な機能は、「頭のいい子」になるのと同じくらい重要なことであることがうかがえます。


話し合い

10分間

  • 施設に暮らす子どもたちの中に、集中することなど、上記に上げられた問題を抱えている子はいるか。
  • 例えば、集中することが苦手な子にとって、苦手であることがその子の日常生活や学習プロセスに、どのような支障をきたすか。また、施設スタッフにとって、それについて計画および実践する上で、どのような支障をきたすか。
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