2.4. 安全基地と探索: 子どもの遊びと他の子とのふれあい
乳幼児が、あまり不安を感じずに離れるということを覚えると、その子に安全基地が確立されます。
安全基地を持つ乳幼児は、分離不安のために泣いたり、しがみついたりすることに全力を費やさなくなります。 乳幼児と接するときは、最初はその子のそばにいて、あまり動き回らないようにします。 養育者がそばにいることで、その子は穏やかになり、養育者が居なくなってしまうことへの不安を抱かなくなります。
その子に安全基地を与えることができてはじめて、「探索」という他の行動が芽生えます。 養育者がそばにいることで穏やかになり、「愛着システム」の「電源」が切れて、「探索システム」という新たなシステムに自動的に電源が入ります。
養育者が居続ける安全基地を確保した子どもは、養育者のそばから離れて、おもちゃで遊び、何かを学び、身の周りを探検し、好奇心を持ち、他の子どもたちとふれあい、小さなことに挑戦し始めます。
これを、探索行動と呼び、子どもの成長には極めて重要な行動です。 健全な子どもは、安心するまでの間、一時的に養育者にしがみつきますが、次第に、遊んだり、探検したりすることを始めます。 これは、身の周りのことを学び、大きくなってからの教育と学習の意欲を身に着ける唯一の方法です。 そのため、安全基地を確保した子どもたちは、分離を避けることに全力を尽くす子どもたちよりも、多くのことを学びます。
例えば、子どもを、新しいグループの仲間に入れようとすると、 最初は、養育者の足にしがみついて泣く(愛着行動)傾向にありますが、スタッフがその場に穏やかに留まれば、その子はスタッフのもとから這い出て、おも ちゃで遊び、他の子どもたちとふれあう(探索行動)ようになります。 そのときに、養育者が立ち上がり、その場を離れようとすると、その子は養育者のもとへ戻ってきて、しがみついて、養育者がその場から離れようとするのを阻 止しようします。
- スタッフが離れようとすると、しがみついたり、泣いたりする子どもに身覚えがあるか?
- 子どものそばから離れるときや、他の子どもの面倒を見るときに、どのように「離れる」習慣があるか?
- どのようにして子どもたちのそばにいて、どのようにして「安全基地」を与えているか?
- どのような時に、子どもたちは安心して、スタッフから這い出て、他の子どもたちと遊び始めたり、ものやおもちゃで遊び始めたりするか?
- どうやったら、日常的な習慣として「いないいないばあ」や「かくれんぼ」といった「練習(しつけ)」をすることができるか?
- 探索したり、遊んだりせずに、スタッフに常にしがみついている子はいますか? どのようにすれば、その子に安心感を与えることができるか?
理解度チェック
- どうすれば、愛着行動を認識できますか?
- スタッフが何をすれば、スタッフが子どもに安全基地を与えることができますか?
- どのように教えれば、子どもたちが、あまり不安に抱かずに(スタッフのもとを)離れられるようになりますか?
- どうすれば、探索行動を認識できますか?
- 探索行動が子どもの成長にとても重要な理由は何ですか?
提案(実践計画のヒント)
- 「安全基地」である保母さんの動画を観ながら、保母さんの同じ場所での留まり方、それがどう安全基地の形成につながっているかを観察する。保母さ んがあまり動かないため、子どもたちは自ら、探索を始めることに注意する。 これをもとに、子どもたちの生活に、どうすれば安全基地を与えられるかについて話し合う。
- 愛着と探索の重要性を理解した今、子どもたちの日常的なしつけにおいて改善したいことがあるかどうかを、グループに分かれて話し合う。
- ある場合、何を今までとは異なるやり方にするのか、いつからそれをするのか、成果が得られたかどうかを知るにはどうすればよいかについて、計画を 立てる(今までとは異なるやり方にする前と後の様子を、カメラで録画することは可能かどうか、これらの活動のまとめ役を誰にするかなど)。