Fairstart Global - JAPAN -
家庭外に置かれた子どもたちを養育する施設スタッフおよび里親のための「フェアスタートトレーニング」

トピックA: 子どもたちの成長 - 施設 vs 里親

施設に暮らす幼い子どもたちの養育

施設に暮らす幼い子どもたちの養育

欧州では現在、3歳以下の子どもおよそ9万人が社会的養護下で暮らし、その数は年々、増加の一途を辿っています。 欧州においては、2歳未満の乳幼児の里親委託を義務化している国が多くありますが、 依然として、施設に委託せざるをえない国もあります。 ロシアおよびルーマニアの病院モデルを採用している孤児院に託された子どもたちと里親に託された子どもたちを対象とした調査により、里親に託された子どもたちの方がはるかに健康に成長しているということが明らかになりました。 これを受け、親許で暮らせない子どもたちはみな、里親に託されるべきだという声が科学者らの間であがりました。 その正否はともかく、科学者らがそのような極端な考えを示した理由は、旧式の病院モデルの孤児院での実情を危険視したためです。

里親委託のデメリット

  • 実際のところ、今後も数多くの子どもたちが施設で暮らすことになる。
  • 資格を満たす里親が常に待機しているとは限らない。
  • いたとしても、養育水準を一定に保つことが困難である。 子どもたちを放置したり、暴力や虐待にさらしたりする里親もいる。
  • 専門基準を満たすよう里親を教育・管理することは極めて困難である。
  •  例えば、 ルーマニアでは数多くの子を施設から里親委託に移行したが、里親が遠隔地に住んでいるために里親の教育と管理が困難であるという大きな問題に直面している。
  • 里親とはいえ、普通の家庭と同じように、離婚や失業といった事情の変化により、里子の養育を継続することが困難になることがある。
  • 身体的または精神的な障害(脳障害、愛着障害など)を持つ子どもたちの世話にストレスを感じ里親が不調となり、子どもたちが転々とさせられることも見られる。 この点からみれば、施設の方が、対応力があり、重度の問題を抱えた子どもたちを長期的に受け入れることができる。
  • 里親と里子(特に2歳以上)の相性を予測することは困難である。 とりわけ、10代になると、里親との間に幸せな関係を築けないことがある。
  • 里親(特に機能不全の家庭の場合)と実親の間に軋轢が生じることがある。
  • デンマークの保育所を対象とした研究により、知識のあるスタッフがいる施設で1日の大半を過ごした場合、機能不全家庭の子たちに改善がみられるということが判明している。

里親には上記のデメリットがあるとはいえ、里親に託された子どもたちの大半がより健康に育つ理由は、おそらく、愛着対象者となる大人の養育者 (1~2人)が絶えずそばにいて、里子を大切にする里親家族という集団が身近にあるからだと考えられます。 また、普通の子どもたちのように、人との付き合いの機会も増えます。 (3歳未満の)乳幼児においては、養子縁組または里親委託、あるいはいつか子どもたちが実親と暮らせるよう親族に託すべきです。 里子に出される年齢が若ければ若いほど、子どもが健全な愛着を持ち、里親と肯定的な関係を築ける可能性が高くなります。 このことは、里親委託と養子縁組に関する研究により裏付けられています。

良質の養育とは小規模かつ長期的な仲間を提供できるかどうかの問題

里親と施設のどちらが良いかということよりも、子どもたちとの絆を育める環境があるかどうか、さらにそうすることのできる枠組み(勤務体制)があるかどう かによって、子どもたちの将来が大きく左右されるということを理解しなければなりません。 また、養育の質は、養育者が健全な愛着対象者として行動できるかどうかにかかっています。 個人的なつながりや集団への帰属意識を高める点では、里親委託に強みがありますが、養育者が入れ替わるリスクや、深刻な問題を抱えた子どもの対応に限界が あります。 一方の施設は、長期的かつ安定した養育に長け、身体または精神的な問題を抱えた子どもたちをケアするための専門知識を備えていますが、 親しみのあるつながりや一貫性を確保することが難しい場合があります。 一貫性の確保を困難にする主な原因は、シフトという勤務体制とスタッフの自由意志による転職です。 とはいえ、施設であっても、1~2名の養育者のもとで一緒に行動する仲間が存在し、その一員であるという所属感を与えることができれば、施設暮らしのマイ ナス効果を和らげることができます。
例えば、ルーマニアの とある孤児院では、地域のアパートでの共同生活を実現するために、7~14歳の男の子たちを4~6人一組のグループに分けました。 この子どもたちの世話は、12時間交代の2チームによって行われました。 この子たちは、お互いに兄弟のような間柄になり、アパートに友だちを連れてきたり、地元のサッカーチームに参加したり、といった普通の子どもの生活ができ るようになりました。
どうすれば、施設に暮らす子どもたちに一貫した養育(者)と所属感を提供するための最適環境を作ることができるのでしょうか。 

グループでの話し合い

(20分間)

セッションの後半で具体的な話し合いの時間が確保されています。ここでは、社会的つながりを築くことに関するスタッフなりの考え方について簡単に話し合います。

  • 施設には現在、3歳未満の子どもは何人いるか。
  • 社会的行動や年齢が里親委託に適している子どもは何人いるか。 (里親委託が可能かどうかは別として)
  • 子どもたちとの長期的なつながりを築くという点について、現在のシフト制の勤務形態で、どの程度、同一の養育者を子どもたちにあてがうことができるか。
  • 所属していると感じられる集団を、子どもたちに、どの程度与えているか。
  • 子どもたちとその仲間との長期的なつながりをどのように高めているか。
  • どのような活動を通じて(信念を持って)、子ども同士の長期的なつながりを高めているか。
  • 子どもたちには、一員としての社会的義務があるか。例えば、年上の子どもたちには年下の子どもたちの面倒を見る役目はあるか。一員としての所属感を高めるために日常的に取り組んでいることはあるか。
  • 子どもたちを年齢(乳児、幼児、小学生など)でグループ分けしているか、それとも、一緒に育つための特定グループに分けているか。
  • いくつもの「家族」が集まる村のような施設か、それとも子どもを年齢で分ける施設か。
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