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家庭外に置かれた子どもたちを養育する施設スタッフおよび里親のための「フェアスタートトレーニング」

トピック B:安全基地モデルに基づいて乳幼児に刺激を与える環境の計画

施設では大抵の場合、大勢の乳幼児の養育を少数のスタッフが担います。里親は、刺激が不十分の赤ちゃんにどの程度の刺激が必要なのかを認識していないことがよくあります。

そこで、2つのことがとても重要になります。

  1. どうすれば、全般的に刺激的な環境(特に日中)を作ることができるのか。
  1. 普通の母親が当然のことのようにする物理的接触を可能な限り乳幼児に与えるための時間が限られているときに、乳幼児に刺激を与える「母親ツール」をどのように使うことができるのか。

ここで、実践活動についての数多くの提案を紹介しますので、それを参考にしながら、現場に即した実践活動に調節していきましょう。場合によっては、数多くの新たな習慣(やり方)として定着するまで、このプロセス(トピックB)を繰り返して、調節しなければならないことがあります。日常的な習慣を変えようとすると、最初は混乱して、波に乗るまでは大変なこともありますが、できるところから改善していきましょう。幼い子どもたちを育てている一般家庭では、当たり前に行われていることですので、不安がらずに取り組んでください。

刺激的な環境改善のための提案

  1. 「ファミリーグループ」:日中に乳幼児がベッドにいるのは昼寝の時間だけ、という要素を組み込んだ活動スケジュールを立てる。昼寝の時間以外は、柔らかい床面(敷布団、カーペットなど)に、複数のスタッフはそれぞれ、赤ちゃんを膝の上に抱えて、座椅子またはそのまま床面に座わり、幼児はその周辺で遊ぶ。ここで、この状態を「ファミリーグループ」と呼ぶ。これは、何千年もの間、少人数の女性で複数の乳幼児の世話をする際にとってきたやり方である。

ポイント: 私生活において3~4人の女性で大勢の乳幼児の面倒をみるとしたら、その日1日をどのように計画すればよいのか。1日を過ごす部屋の装飾や見た目はどうあるべきか。施設の部屋は「おうち」のような雰囲気にするべきであって、「施設」のような雰囲気にしないことが重要である。

  1. 子どもたちを抱きしめたり、優しく肩を叩いたり、手を持ってぐるぐる回ったり(メリーゴーランド)、手をつないで散歩をしたりと、物理的な接触を促すことが習慣的にできる環境を作るには、どうすればよいのか。
  1. 赤ちゃんを頻繁に抱っこやおんぶで運んだり、膝に抱えて座ったりすることを、どうしたら習慣的に行うことができるのか。どのような道具(例えば、抱っこひも/スリングなど、スタッフの体に取り付けられるものなど)を使えば容易になるか。

ベッドの改良、またはハンモックや揺りかご(クレードル)との交換

  1. 皮膚への刺激を高めるフランネルやタオル地のブランケットを使用することで、普段使っているベッドをいくつかの方法で改善することができる(ベッドが温かくなりすぎないように注意する)。

(1)ベッドの手すりの2ヵ所にかけられるハンモックを作ると、そのままベッドのマットレスの上にハンモックをかけて、自由にスイングできるため経済的である。(2)ベッドは活用せずに、柔らかいマットレスや布団を床上に置いて、ハンモックを使う。(3)赤ちゃんが起きているときに身の回りを観察できるようにベッドを改造する。

幼児向けには、室内または庭のマットレスの上にハンモックやスイングを置く。幼児がバランス感覚を養う時間を日課に入れる。これを計画する際は、ハンモックやスイングを特別な部屋に置かない。これは、普段の生活空間にハンモックやスイングがなければ、子どもたちが興味を示さないからである。そのため、養育者が過ごしている場所にできるだけ近いところに置くとよい。

  1. どうすれば、ベッドの周りに、赤ちゃんの注意をひくもの(モビールなど)を吊り下げることができるのか。それができなければ、赤ちゃんが起きているときに眺められるものを探さなければならない。
  1. どうすれば、壁を明るい色や(今までとは)異なる色に塗り替えて、ものや写真を壁に貼ることができるのか?
  1. どうすれば、自作の歌や音楽を使うことができるのか?赤ちゃんのために歌うことや、幼児と一緒に歌うことは言語発達に不可欠である。子守唄は、赤ちゃんの脳に大きな安らぎを与える作用がある。スプーンやバケツなど身の回りのものを使って、リズムを作り出すことができる。

ラジオやテレビ

一般に、ラジオやテレビからの音声は、赤ちゃんをとても困惑させます。赤ちゃんが言葉を学ぶためには、話している人の音や動きを結び付けて覚えなければなりません。ラジオやテレビの音声が赤ちゃんを困惑させる理由は、その音声が、養育者とその子がしていることに結び付かないからです。雑音もまた、赤ちゃんにとって、養育者の話すことを聞いたり、話す様子を見たりということが難しくなる要素です。ラジオやテレビは、幼児だけに限定して、しかも短時間に限る必要があります。幼児が何かを見ているときは、幼児が見ているものについて話しかけなければなりません。

話し合い

20分間

  • 普通の「おうちのような」環境と「家族のような」接し方に向けて改善していく上で、難しいことは何か?(そのように施設環境を変えることに)誰か(リーダー、訪問者、その他)が反対するか?それがなぜ保育の実践に役立つかをどうすれば関係者に説明できるか?
  • スタッフがグループになって、実践することは難しいか?難しい場合、その理由は何か?この実践の展開にあたってお互いをサポートするために、何ができるか?
  • (上述の)提案内容の中で、スタッフが既に実践していることはどれか?
  • 実践していなことがある場合、その中で最も実践しやすいのはどれか?
  • それをやってみようとするとき、現実的に問題になることは何か?
  • どうすれば、その問題を解決できるか?
  • 子どもたちが新しい環境と刺激に慣れる時間を与えられるように、変化のスピードをどうやって調整するか?
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