はじめに
スタッフ個人の専門知識を整理する
施設で暮らす子どもが10代になり思春期に入ったときに予想されることと、それに対する役割は、どのようなことですか?
最初の取り組みとして、各スタッフが10代のときに経験したことや直面したことに基づく個人的知識を整理します。 そこから、どうすれば、その経験を、施設に暮らす10代の子どもたちを理解し、働きかけるための専門的な枠組みに活用することができるかについて話し合います。
グループでの話し合い
(30分間)
2人一組になり、以下の質問について、お互いにそれぞれ15分間のインタビューをします。 質問者は、回答をメモして、すべての質問を終えてから、そのメモを回答者に手渡します。
- 自分自身の思春期の移り変わりに、どのようなことを経験したか。
- 仲間との関係にどのような変化があったか。
- どのような身体の変化を経験したか。
- どのような感情の変化を経験したか(不安、羞恥、反抗、歓喜など)。
- 親/養育者に対する考え方、振る舞い、態度にどのような変化があったか。
- 親/周囲の大人はどのように支えてくれたか。うるさく感じたことは何か。
- 親の言うことを聞くということと、独立を望む自分の気持ちとの間に、どのような葛藤があったか。 (例えば、友達と遊びに出かけるために親にウソをつくなど)。 どういうときに、葛藤が激しくなったか。
- 結果として自分が10代のときに最も厄介だったことは何か。10代の子どもたちを支える専門家として、その子のためになる行動とは何だと思うか。
- 10代の子どもたちを支えるために、自分と他のスタッフがどのように取り組めばよいかについて、何かアイデアはあるか。
スタッフ全体の専門知識を整理する
インタビューが完了したら、スタッフそれぞれが10代のときの個人的な経験をまとめます。 まとめた内容について、良い経験と悪い経験について話し合います。 次に、スタッフ全員の観点で、施設に暮らす10代の子どもたちと接する養育者としての三大価値(信念)を決めます。
第一条: 施設に暮らす10代の子どもには、……………………………………………………..が必要である。
(例:その振る舞いが未熟であっても、養育者からの尊重と理解)
第二条: 施設に暮らす10代の子どもには、……………………………………………………..が必要である。
第三条: 施設に暮らす10代の子どもには、……………………………………………………..が必要である。
この三大価値は、施設に暮らす10代の子どもたちと接する際に専門家としての行動基準になります。
10代の子どもたちと接する際の一般的な発展と役割
一般に、社会的養護下にある10代の子どもたちは、普通の子どもたちと同じ思春期の経験をしますが、初期の不安定な境遇のために、試練の時期となり、情緒 が極端に不安定になることがあります。 思春期は、これまでの愛着を強める方向とは反対に、独り立ちして教養が身に付けられるようにするために、親離れや別れを前向きに行うにはどうすればよいか ということが課題になります。
乳幼児期に深刻な虐待や剥奪(デプリベーション)を経験した子どもたちは多くの場合、思春期の始まりが早く(生き残るためのメカニズムと考えられる)、中には8~10歳で経験する子もいます。
研究によると、恵まれない乳幼児期を経た子どもたちが、思春期をむかえると、養育者との親密な関係が、精神的に難しいものになることがあります。 密接な関係に息苦しさを感じる年頃であり、衝突により進路が中断されてしまうことがよくあります。言い争いや衝突が激しくなり、家出をする、距離を置く、 聞く耳を持たない、論理的に考えることを拒むなどの行動が見られます。
思春期において、若者は新たな独立心を形成しなればならず、通常は未熟な依存と信頼の狭間で立ち回り、スタッフとの距離を置くことで独立を実現しようとし ます。 非常に多くの場合、若者は、何が幻想で何が現実であるかを明らかにするために、生みの親や親戚との再会を求めます。 定期的に家族と再会することは、家族に会うための家出行為を未然に防ぎます。
仲間グループとの一体感の方が、スタッフグループとの一体感よりも、はるかに重要になります。 門限、夜遊び、ピアスの穴開けなどの問題が出てきます。 研究によると、社会的養護下にある若者は、仲間グループと行動することに執着し、スタッフグループは多くの場合、例えば、若者が授業をさぼることを見過ご した場合にどうなるかを恐れます(大抵の場合、恐れるに値する当然の理由がある)。 結果的に、スタッフは実親よりもはるかに厳しくなることが多く、若者にとっては大きな障壁となります。
このような状況を容易に解決することはできませんが、役に立つ専門的な方法がいくつかあります。 最も重要なことは、スタッフが優しく、落ち着いて、しっかりと理解のある姿勢を示し、スタッフ全員で意思決定や方針を固めることです。