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家庭外に置かれた子どもたちを養育する施設スタッフおよび里親のための「フェアスタートトレーニング」

トピックA:家庭外に置かれた子どもたちの社会的アイデンティティ

社会の受け入れ

施設または里親に託された子どもたちは、委託されたあと、新しい養育者と環境に慣れるための時間をしばらく必要とします。これには、3ヵ月~1年を要することがありますが、これは委託されたときの子どもの年齢に大きく左右されます。年齢が上であればあるほど、新しい環境を受け入れるまでには時間がかかります。これを、受け入れ期間、または安全基地形成期間と呼ぶことができます。この期間中、子どもは、それまでの養育者との別れを嘆き悲しみ、家族グループに仲間入りすることに、そのエネルギーのほとんど費やします。スタッフは、子どもの様子を見ながら、その子の目立つ癖、振る舞い、問題、および内に秘めた力を理解するよう努めることができます。子どもは、施設での親代わりのスタッフとのつながりを築き始めることができ、

次第に、養育者が重点的に取り組む部分が、日常のリズムを子どもに与え、その子どもが、子どもグループで機能できるよう助け、偶発的な衝突を乗り越え、グループ内での居場所と役割を見つけさせ、できる限り、他の子どもたちと仲良くできるよう助けることへと変化していきます。


子どもたちが地域社会の活動的メンバーになれるよう手助けする

家庭外に置かれた子どもたちへの専門的な仕事が落ち着き、子どもが安全基地を確保したころ、子どもたちは施設または里親家庭で、施設外の生活との接触がほとんどない生活をしているという現実を突きつけられることがよくあります。
これはもちろん、健全かつ安定した養育者が四六時中必要な赤ちゃんや、ホームスクールまたは特別支援学校に通うなど保護された環境での生活が必要な重度の行動上の問題を抱えている子どもたちにとっては、良いことではありますが、「子どもたちが入所前に経験してきた外の世界よりも、子どもたちを守り、特別かつ寛容な環境にするには、子どもたちにどの程度の距離を社会との間に持たせ、地域社会に参加できるよう、どの程度、手助けすればよいのか?」というよくあるジレンマが生じます。

これらの問題は、子どもが保育所や学校に通う年齢になるころと思春期を迎えるころに話し合うことがよくあります。どのような家庭でもあるように、安全の保障と探索のバランスに、養育者としてジレンマを感じます。

施設や里親においては、社会との間に置かれた距離を開き過ぎ、安全を重視し過ぎると、特殊すぎる、またはことによると機能を果たしていない組織を形成するリスクを高めます。例えば、家族または組織の生活が、地域社会との接触なしに、孤立すると、性的虐待や暴力のリスクが高まります。

子どもたちの多くは、その子どもたちに問題があるのではなく、その実親が子どもを育てられないとう理由で施設や里親に託されています。そのため、年齢的に幼児以上の子どもが、自分のことを地域社会の中での生活から排除される集団と感じることがあってはなりません。また、社会的生活も、子どもたちがいつか施設を巣立つときに衝撃を与えるものであってはなりません。これは、施設にいる間に、社会との接触がなかった子どもたちには、よくあることです。

例えば、ルーマニアにある、特別な支援を必要とする子どもと外界との間で接触がある施設を例に挙げると、12歳の女の子は、3歳のときに交通事故に遭い、脳損傷を受けました。この女の子は手足を使えず、話すこともできません。ある日、オランダの専門支援チームが、この女の子の前額部に取り付けられるスティックを作り、それにより、この女の子はスティックを使ってパソコンのキーボードに触れられるようになりました。6ヵ月のトレーニングを重ね、この女の子は、パソコンを使ってメッセージの読み書きができるようになりました。この女の子が外の世界と本当の接触をしたのは、これが初めてでした。以降、この女の子は、時間とともに多くのことを学び、インターネットを介して施設外の女の子と友だちになり始めました。

話し合い

20分間

  • 現在、施設でケアしている子どもたちの中に、(施設で暮らしているという事実をその他の子どもたちが知らない場合に)施設外の保育所や学校にいる他の子どもたちと接したり、一般的な社会生活をしたりすることができそうなほど、振る舞いが正常な子どもは何人いるか?
  • 施設/里親家庭外での生活に加わることを難しくさせる問題を抱えている子どもは何人いるか?
  • 施設の子どもと施設外の世界との間の接触を促すということについて、現在の施設の姿勢(見解)はどうか?それは、概ね肯定的か、それとも否定的か?
  • 施設と施設の子どもたちに対する地域社会の姿勢はどうか?
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