日々の実践と病院モデルの比較 2/4
病院モデルでの養育は子どもたちの発達にどう影響するか?
1945年以前から、専門家は、孤児の養育における病院モデルの影響について研究をしてきました。残念なことに、この組織モデルと価値観は、子どもの健全な脳の発達、社会面での発達、さらに学校での学習能力の発達に極めて有害です。
その理由とは?
セッション3のビデオクリップでは、子どもの養育には、日課的な仕事とつながりを教える仕事 という2種類の仕事があるということを学びました(必要に応じて、改めてビデオクリップを観てください)。病院モデルでは、つながりを教える仕事は重視されませんが、すでに学んだように、社会的なつながりと物理的接触(スキンシップなど)は、子どもの健全な成長に絶対的に必要です。
スキンシップや社会との交流を乳幼児から剥奪すると、それが子どもに影響することが多くの研究により裏付けられています。病院モデルならではの衛生対策にもかかわらず、子どもたちは極めて頻繁に病気になり、社会的ふれあいが欠如しているために、元気がありません。施設に暮らす子どもたちの中には、施設に委託される以前に、デプリベーション(剥奪)または虐待を経験してきた子どもたちもいます。
子どもの発達と病院モデル
このモデルの負の影響についての説明
「Alpha Power(6~9Hz) Across Different Brain Regions」
出典: Zeanah et al:"The Bucharest Intervention Study"
施設外で暮らす子どもたちに比べると、施設暮らしで刺激不足の子どもたちの脳の活動は低い
- 脳の発達は極めて遅く、十分に活性化されない。
- 人との接触が不足し、脳が活性化しない場合、新生児はその生涯にわたって抱える問題を持つことがある。例えば、
- 体を動かしたり、使ったりする能力(運動発達)の遅れ、他の人とのふれあい面(社会性の発達)の遅れ。
- 人との適切な接触を持たなかった子どもは、ロッキングやヘッドバンギング、単調な叫び声を上げるなど自己刺激行動を呈する。
- 食物が十分にあっても、身長と体重が増えず、また頭囲が減少する。
- 人との接触の剥奪による死亡率の著しい増加。
- 感染症に非常にかかりやすくなる。
- 学校や経験から一般的なことを学ぶ知的能力の低下。
- 後々の発達において、児童期になってから、他者と社会的関係を形成する能力の欠如、方向性の定まらない行動や引きこもり、あるいは攻撃的および破壊的な行動を呈することがある(愛着障がいと診断される)。
- 青年期では、幼少期のデプリベーションを原因とする犯罪的、攻撃的、および暴力的行為(精神病質であるケースもある)が見られ、これには配偶者や子どもへの家庭内暴力も含まれる。また、幼少期のデプリベーションと、その後のうつ病、薬物乱用(アルコール、麻薬など)には、人格障がいや未就労などとの密接な関係がある。
- 体温および脈の乱れ
- 過活動または動作が極端に鈍い
- 睡眠障がい
- 消化器系の問題
- 摂食障がい(過食・拒食)
- 注意障がい
左から、少女11歳、少女14歳、少女17歳