トピックA:社会的能力を学ぶための基礎的リソース:子どもと養育者のつながり、子ども同士のつながり 3/6
社会的能力を学ぶ機会を作る:子ども同士のつながりを教える仕事の三大原則
子ども同士のつながりに関わる社会的能力の発達を支援する三大原則があります。これを覚えて実践するまでには、多少の時間がかかります。
原則1: あらゆる振る舞いが社会的に振る舞うことへの挑戦
例:
9歳の男の子が施設に委託されました。最初の日、この男の子は、泣き叫ぶことが多く、施設のスタッフは嫌いだと主張し、授業を何度も妨害して、ものを片っ端から壊して、揚句の果てに、逃げ出そうとしました。子どもたちの一人が、この男の子に、こう言いました。「止めなよ、そんなことしても、ここの大人は諦めないよ。」
一ヵ月ほど、衝突と限界を探る行動を繰り返した男の子は、「止めなよ」といってくれた男の子に言いました。「お前があの時に教えてくれたことは本当だった。」 その日を境に、この男の子の反社会的振る舞いのほとんどが、一夜にしてなくなりました。これはどいうことでしょう?
まず、養育者は、1年間にわたり、安定した子どもグループ作りを成し遂げてきました。新たに入所した子どもの行動上の問題によって引き起こされる問題を抑えられるほど安心した子どもグループを築くには長い時間がかかります。これは、新たに入所した子どもたちの問題を吸収することに役立つほど、子どもたちがその施設のことを十分に知っているという意味です。
また、社会的に振る舞おうとする子どもの挑戦としては、最初は有害なことのように見受けられますが、養育者は、どのような振る舞いも理解しています。この男の子は、愛情と保護を求めているけれども、この男の子は、注意を引こうとして泣き叫び、叩き、他の人の気を散らし、嫉妬するという赤ん坊のようなやり方で、それを求めようとします。この男の子は9歳という年齢でありながらも、マイナスの経験により社会的発達が遅れたために、乳幼児がそうするような方法で、愛情を求めます。この男の子をケアする計画として最初にできることは、年齢を4で割ることです。これにより、どのようなケアをこの男の子が必要としているかを「解釈」することができます。
赤ちゃんは、かんしゃくを起こします。不満があると、のたうち回ります。しかし、養育者からの関心を得られなければ、5分と持ちません。そのため、その施設のスタッフにとって、この子ども(前出の男の子)の振る舞いは、関心と愛情を求める赤ちゃんの行動としては当然であるため、スタッフは、2歳の子どもと接するときのように、この男の子に反応します。かんしゃくに対して興奮せず、懲らしめず、また決してその子を一人にせず、他の赤ちゃんと交流するよりも母親と長い時間を過ごす赤ちゃんのように捉えます。この男の子には単純なことを一時的に求めるだけに留めて、入所してからすぐに学校などでこの男の子が正常に振る舞うことは見込めないため、最初の6ヵ月は、安心感を得て、落ち着くための期間を置きます。
子どもたちの振る舞いが奇妙でも反社会的でも、それが、不安を減らし、愛情を得ようとする未熟な試みであろうと解釈することが重要です。子どもたちの振る舞いには、過去の経験が完全に関係しています。例えば、路上で一人だけで生き残らなければならなかった幼い子が、食べ物を盗んだり、執着したりするのは、理にかなっています。
話し合い
10分間
- 子どもたちの中から、行動面での問題を数多く抱えている子どもを一人挙げて、考えてみます。その子どもの行動を考えたときに、その子どもが何歳であれば、その振る舞いは完全に普通であるといえるか?そのような振る舞い方により、その子どもは何をしようとしているのか?注意を引きたいのか?不安に対処しようとしているのか?拒絶されるのを防ごうとしているのか、それとも権力者の職権乱用から逃れようとしているのか。
- 社会的発達面からみたその子の年齢は何歳か?その年齢の子どもが興奮するときに、良い養育者はどのように反応するべきか?その子どもの実年齢を4で割ったとき、その子どもに求めていたことは年齢相応だったか?その子どもに何かを説明したときに、その子はそれを理解できるか?それとも、何をどうするかを手とり足とり教えた場合にのみ、理解できるか?