トピックA:社会的能力を学ぶための基礎的リソース:子どもと養育者のつながり、子ども同士のつながり 4/6
原則2: 子どもが何をするかは重要ではなく、子どもがどのようにそれをするかが極めて重要
子どもが、他の子どもに対してしはならないこと、例えば、髪の毛を引っ張るなどするときに、養育者の最初の反応は、仲裁に入って(「こっちへ来なさい、そんなことしたらいけませんよ」)、髪を引っ張られている子どもを守ることです。これはもちろん、守るために時として必要なことではありますが、怒られている子どもは、この経験から、人との良い付き合い方を何一つ学んでいません。
社会的な振る舞い方を支援する他の方法として、単に行為を禁じるのではなく、どう振る舞えば良いのかというお手本を見せてあげることです。これは忍耐を要することですが、「こっちへ来なさい、そんなことしたらいけませんよ」と叱るのではなく、「こっちへ来なさい、どういう風にやればいいか教えてあげるわ」という接し方をして、そこで、スタッフが、他の子どもの髪を優しく撫でて、その子にも同じようにするように求めます。
他の例としては、ケンカばかりしている2人の男の子がいて、いつもどちらが強いかを決めるためにいたずら競争をしているとします。そこで、スタッフは「どちらが強いか決められる方法を教えてあげるわ。まずは、競争のルールを決めましょう(ボクシングやテニスのようなスポーツのルール)。5分間だけ競争して、ポイントが多い人が勝ちよ。どちらがポイントを獲得したかを決めるのは私(スタッフ)。良い行いをすればするほど、ポイントが増えるわよ。」
ようするに、秩序のないアクティビティに一連のルールを作って、社会的なアクティビティにするということです。場合によっては、場所や場面のコンセプトを活用して、例えば「キッチンでケンカなんて考えられないことよ。ご飯を食べてから、スタッフの誰かが、お外に連れていて、ルールを守ってケンカをする方法を教えてあげるわ。」と話すのも、良いアイデアです。
つまり、スタッフの焦点となるのが、子どもが何をするのかではなく、どうやってそうするかということになります。
原則3:社会的能力を段階的に教える
施設または里親家庭においては、社会的能力を教えるプロセスを段階的に行うことができます。
第1段階:子どもが大半の時間を親代わりのスタッフと密接に過ごしているときに、スタッフはその子の他の子どもとのあらゆる接し方について手助けします。子どもが新しい環境に慣れて、比較的安心して親しみを感じられるようになってからでなければ、学ぶことに力を入れることはできません。子どもは、養育者の意思決定を試すことがありますが、落ち着きと説得力のある養育者により満たされていきます。子どもが、他の子どもとの困難の状況で機能できない場合には、養育者が「タイムアウト」をして、養育者と子どもはその状況から一歩離れところで、子どもが落ち着くまでその状況について話をします。養育者は、子どもを叱らずに、子どもにその状況に戻ってからの行動の仕方を提案します(「いま私が見せたように行動すると、うまくいくよ」)。
第2段階:あいさつをする、怒らずにゲームをするなど日常的にみられる行動上の課題についてはまず、養育者と子どもの間でリハーサルをします。例えば、養育者が子どもとサッカーをして、不満なことがあっても対処できるように手助けします。養育者と問題なくサッカーができるようになってはじめて、別の子ども(一人)とものサッカーを試みることができます。
第3段階:徐々に、別の子どもたちと遊べるようになったころに、行動上の問題が再燃する場合には、再び、子どもと養育者でリハーサルをします。
第4段階:一緒に遊ぶ子どもの数を増やします(サッカーチームでのポジションを与えるなど)。これで問題なく遊べるようになれば、養育者が定期的に監督する傍らで、他の子どもたちと遊び始めることができます。
子どもには、マスターするまでステップを一つずつこなしていくというやり方をするということを説明して、失敗しても単に一つ前のステップに戻るだけのことだということも説明する必要があります。養育者は、ビデオを活用して、何をどう改めればよいのかを子どもと話し合うと、子どもが状況への対処の仕方を理解することにつながります。
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