Fairstart Global - JAPAN -
家庭外に置かれた子どもたちを養育する施設スタッフおよび里親のための「フェアスタートトレーニング」

トピックA:グループのアイデンティティ形成 1/3

「村」設定で社会的な関わりのルールについて学び、練習する

小さな町や村は、安全基地を提供し町民や村民を社会集団にまとめることに長けています。
まとまりのない振る舞いをする村民に統一感を持たせることができます。一体、どのようにして実現されているのでしょうか?どうすれば施設や里親家庭を、子どもたちが役割や社会的機能を身に着けられる「村」にすることができるのでしょうか?子どもが社会から受け入られて、社会に所属しているということが実感できれば、子どもが抱えている問題や障がい自体は、重大なことではなくなります。

 そこで、村での生活の社会的側面について見ていきましょう。

役割、機能、および適切な行動のためのルール

健全に機能している家庭、里親家庭、または施設において、その生活は、村での生活のようなものです。全員に社会的な役割と機能があります(例えば、郵便配達員といえばジャックさん、村長といえばアルバートさん、主婦といえばミランダさん、バス運転手といえばアンナさん、いたずらっ子といえばジェームスくん、動物の赤ちゃんを飼っているといえばクリスティーナさんなど)。

誰もが、一連の行動模範的ルールに沿って生活しています(人との話し方、特定の職業に適切な衣服、作法、または活動、公に話して良いことと悪いことの判断など)。


一員になるプロセス:社会的包容、影響、および友情

子どもにとって、最初に問題になるのは、仲間に入っていると感じられるかどうかです。行動模範に従わなければ、仲間外れにされ、従えば、仲間に受け入れられます(例えば、「あの人は他の村から来たよそ者だけど、サッカーがすごく上手だったので、みんなからすぐに受け入られた」、「あの子は目が見えないけれど、周りの人を思いやるいい子です」)。

二つ目の質問は、役割、制限、および意思決定です。世の中には、権力と影響力という仕組みがあります

(例えば、「A婦人は、B婦人よりも女性グループに影響力がある」、「子どもたちはどの程度のことに決定権があり、スタッフは何について決定権を持つのか」)。

影響力と権力は絶えず変化するものであるため、当然の衝突と紛争解決というものが存在します

(例えば、「隣同士のA氏とB氏は、土地の境界線の引き方で揉めている。どちらも落ち着いて話ができるようにランチをすることにした」、「2人の子どもたちがけんかしていたので、スタッフが仲裁に入らなければならなかった」)。

そのような揉め事が解決されると、突然に親密な関係、親近感、友情というものの余地ができ、信用することができて、秘密を打ち明けられる存在ができます(ケンカばかりしていた男の子2人は今では親友同士である)。


村は、村民が村の一員であることを実感させる特定の儀式、例えば、宗教的なお祭り、宴会、誕生会、記念祝賀などを行います。

これらはすべて、公式のコミュニケーションシステム(例えば、「村長がアルコールの乱用の撲滅キャンペーンを提唱した」)と非公式のコミュニケーションシステム(例えば、「彼の妻が大酒飲みなので、そういうキャンペーンを提唱したということは村民なら誰でも知っている。」)によって、織り成されます。

つまり、一般の生活私的な生活が存在します。


想像してみてください。村にはさまざまな社会的な場所や場面があります。どの場所や場面にも、それに加わるための特定のルールがあり、その場所や場面ではやって良いことと悪いことがあります。

例えば、公園の遊び場は、取っ組み合いをしたり、叫んだり、大声を出したり、遊んだりすることができる場所です。

それに対して、寺院や神社などのその然るべき場所では、境内や建物に入る際には敬意を表し、声を潜めて話し、冠婚葬祭が行われます。

サッカー観戦にもルールがあります。食事をするときは手を洗ってから着席するといったこともルールです。キッチンでは料理が行われ、食卓でご飯を食べながらその日のことを話します。遊びながらご飯を食べたり、食事中に叫んだり、大声を出したりすることはしません。

村では、子どもたちが生まれたときから、社会的包容、仲間外れ、役割、権力、影響力、絶望、衝突、紛争解決、公式および非公式のコミュニケーション、儀式、さまざまな場所や場面での作法といったすべてのことを、誰に教えられることもなく覚えます。場合によっては、両親から教えられることもあれば、お手本となる大人を見て覚えることもあれば、仲間や年上の子どもたちとの遊びを通じた経験から学ぶこともあります。

そのため、優れた施設や里親家庭は、社会的包容、影響、および親近感の秩序を統制し、子どもたちにグループ内での役割と社会的機能を与え、生活と振る舞いをさまざまな場所や場面に対応させることで、社会的アイデンティティを築きます。

|トップへ戻る|